第5話「死を呼ぶノート」
私は、今、とある古ぼけた店にいる。
ここは、『何でも屋』。
ありとあらゆる物を扱っていると豪語する店だ。
薄暗い店内には、見た事も無いような物や、見るからに怪しい物、
うさん臭い物などが、目白押しだ。
実は、私は客では無い。
今日も、私の発明品を売りに来たのだ。
店主は、つるピカ禿頭に、長く立派な白い髭を蓄えた、まるで仙人の様な老人で、
私は、店主と私の発明品の値段の交渉を行っていると、
一人の男が入って来た。
年は20代後半~30代前半位だろうか?
身長は170cm程で、なかなかガッチリした体型だ。
短髪の髪は、以前、茶髪に染めた跡が見られる。
長方形の顔は、しかめっ面で、一直線の太い眉毛に、睨む様な小さな瞳、
大きなワシ鼻、 への字口、くるくるほっぺに覆面姿。
否、くるくるほっぺに覆面姿は、違った。
男は、真っ直ぐこちらにやって来た。
「ここは、何でも売ってるんだってな!
巷で噂の『死を呼ぶノート』ってのは、あるかい!?」
男は、流石に無いだろうと、やや挑発的な態度で、大声を張り上げた。
「あるよ。」
店主は、素っ気無く返事した。
男は、暫く鳩が豆鉄砲、喰らった顔をしていたが、
気を取り直すかの様に、咳払いして、こう言った。
「本当かッ!いくらだ?」
「そうよのう、42万円だな。」
「高いな。」
「じゃ、売らん。」
「分かった!42万で買うよ!売ってくれ!」
店主は、そっと手の平を差し出した。
「待ってろ!直ぐ用意して来る!」
男は、言い終わらぬ内に店を飛び出して行った。
「死を呼ぶノートだって?
私はそんなの作って無いぞ?
そんな物、どうしたの?」
「ふぉっふぉっ、ヒミツじゃ。」
「秘密で良いから、こいつをもう少し高く買ってくれよ。」
「しょうがないのぅ…
これでどうじゃ?」
「もう一声。」
そうこうしていると、男が嬉々として戻って来た。
またも、私と店主の話に割って入る。
「金だ!ノートを!」
「これじゃ。
使い方は、殺したい相手の顔を思い浮かべながら、
そいつの名前をノートに書くんじゃ。
そうすれば、数時間以内に、最も自然な形で、そいつが死ぬ。」
「分かった!ありがとよ!」
私は、店主に手の平を差し出した。
「やれやれ。」
そう言うと、店主は、発明品の代金をくれた。
良し、良い値で売れた。
その晩、テレビのニュースを見ていたら、見覚えのある顔が、テレビに映った。
「あッ!あの時の男だ!」
どうやら、殺人を犯して捕まったらしい。
死を呼ぶノート、
殺したい相手の名前を書くと、
最も自然な形で、そいつが死ぬ…
そう、最も自然な形で…
人を呪わば、穴二つ。
0 件のコメント:
コメントを投稿